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慶応義塾大学総合政策学部長

國領二郎先生 

1.高校

ーまずは今の高校生。僕たちに対して何を求めるか、今の高校生全体に対して何を求めるか何かメッセージがあれば教えて下さい。

すごく大きいな(笑)。まあさ、基礎体力はつける方がいいと思うな。知的体力も含めて。勉強した方が良いと思うのよ。それもできあがった知識を取り込むだけではなく自分の頭で考えられるようになることが大事だと思う。だけどこれができていないのは、大半が大人のせいなので、やっぱり大人の社会に対してそのことを言いたいですね。

— 学校の活動だけにとどまって、外の世界に発信することができない学生がいます。
それは高校生に限定せず、日本全体のことだと思っています。 できるようになるには自分の思いを大切にすること。大切にすると時々脇道にそれてしまうのだけど、戻ってきたりしてさ、人生長いからあまり一直線に進まずにいろんな経験をしてやり直してみたりね。それが大事なような気がして。大学生も、僕の所に一年間料理の修業といって世界中歩いて料理の勉強をしているやつがいて(笑)だからやっぱり人生それぞれの人にそれぞれのペースがあって、そのペースに合わせて自分が一番問題意識を持てる時にやることをやるというのが大事じゃないかな。
今僕の所にとある高卒の会社の社長が「大学で勉強したい」って来てね。傍ら何百億って会社を経営してて大学に来て。そういうのいいなって思う。

—脇道にそれるという考えは素晴らしいと思うのですが、それは怖いという人もいますね。 
怖いから無難にというのは、それはそれでいいじゃない。みんなガンバレって言ったって心の強い人弱い人いろいろいるし、全員にとんがれというのも・・・尖るのが普通ということになると、じゃあ「普通」って何ということになりますからね。

 

2.大学
ーありがとうございます。次は高校から大学に話を移したいと思います。僕のipadにあるiTunesUというアプリには大学の授業も入っているのですが。例えば授業を受けるための大学ならiTunesUでもいいんじゃないかなと思っているんです。これからの大学の存在意義というのをどう考えていますか。
そこは常識に囚われちゃいけないので、全然違うキャンパスの形があってもいいと思うんですけどね。キャンパスを止めて全部ネットの上に引っ越すというのもあっていいと思うよ。

—今もありますよね
うん、あるよね。でも今のところまだだと思ってる。ネットが発達すればするほどリアル空間が大事になってきている気がして。SFCでも残留の嵐で床に勝手に寝ちゃうので、宿泊施設を作ろうとしてるのよ(笑)。ということで物理的にはロケーションにはこだわってたりはする。でもだからといって、既成概念に囚われる必要はないんです。
例えば、時間割の無い大学を作れないかと思うんですよね。決まった何曜日の何限とかさ、 こっちの科目とこっちの科目が重なっているから両方いっぺんに取れませんとかさ。2ついっぺんに取りたいよという時に取れないじゃん。


ー何か規制とかがあるんでしょうか。

それは具体的に「こういうことをやれば解決できる」ってことが示されれば解決し終わると思います。もっと良い体験ができる仕組みというのが開発できればいいと思っています。
今は日中の時間帯はビデオ映像を 見るだけ見といて、ディスカッションは夜ウェブ会議上でやったりしている。

ーということはこれからますます、多様な授業や形態を持つ大学が出てくるということですか。

そうなると面白いですね。

 

3.社会、就職

ー高校、大学ときましたので次は社会ということで質問をさせていただきます。「会社に入ってから3年程で辞めてしまう」というニュースがありました。僕はそれが高校生活にも原因があると考えていまして、その頃から主体的に動くことをしていなかったから、社会人になってから自分は本当は何をしたらいいのかわからなくなってしまうと思っているのです。

おっしゃっていることはとてもよく分かって、やっぱり主体的にものを考えるような癖がついていないと働きだした時に迷いが出るというのはそうなんだろうなとおもいます。でも、迷いがでてもいいんじゃないかと思っています。

 

ー終身雇用制も崩壊したと言われています。

「天職」という言葉があるじゃない。だいたいやっぱり世の中のことが分かって、天職が見つかるというのがそんなに早くできるわけない。大体22歳で見つかる人ってそんなにいないと思うのね。30歳超えた辺りで見つかるくらいでいいんじゃないかと思っています。

 

ー子供の頃から例えば天才プログラマーとか、数学者みたいな人もいますね。

 そういうのもいて、もう一直線16歳17歳で夢に向かってまっしぐらな人がいてもいいと思うけど、たいていは18歳22歳で一生の道筋が決まるような人はいないと思う。

人生は長いからいろんなこと試すといいと思う。それと遊んで暮らすのとでは話が違うので、やっていることに一生懸命に取り組んで。ある程度やりきってから次へいくことは構わないと思う。

 

4.SFC

ー人間て十人十色じゃないですか。それはSFCの学生に共通する部分もあるはずなんです。國領先生はどういう個性、どういう学生であってほしいですか。

SFCのことを語ると、いろんな人に来てほしいけれど、誰でもいいわけじゃなくて、問題意識を持って行動できる人じゃないと、このキャンパスはすごく自由なので迷っちゃうと思うんですよね。


—目標意識を持ったほうがいいと。

やはり自由というのはとても苦しいもので、それを苦しいと思わず楽しめる人じゃないと苦しくなる。要領いいやつは妥協して適当に単位を揃えて、何をしたのか分からないまま出て行く子もいるし、真面目な子は悩んでしまってちょっと危ない時がある。要領のいいやつは勝手に出て行けばいいのだけど(笑)

 

5.インターネット(黎明期)

ーSFCはインターネット発祥の地だといわれています。なぜSFCなのでしょうか。関係はあるのですか?
そりゃ、村井さん(村井純環境情報学部長)がいたからでしょ(一同笑)。それだけじゃなくて、実を言うとインターネットというのは1980年代くらいは日本の国はOSI※という別の技術を使うのを国策としていたんだよね。インターネットはそれに反逆する技術だった。

 

※OSI 通信規格の標準化を図るための規格。1977年にISO(国際標準化機構)によって発表され、1984年にCCITT(国際電信電話諮問委員会)で承認された。開放型システム間相互接続と訳される。 

 

ーそれを村井さんが変えたんですね。総合政策学部としてはインターネットをどう捉えていますか。2つの学部で分けるのはちょってはばかれるのですが。

ぐちゃぐちゃ一緒くたです。でも2つの学部に分けてよかったと思いますよ。900人生徒の学部って本当に顔が見えないし、450人くらいがいいと思う。

 

6.社会変革、起業
ーSFCでは起業をする方も多いですよね。何か他大学と授業において差をつけている部分などあるのでしょうか。

 これは授業とかではなくて、日頃から主体的に動いて問題解決をしろとずっと言われやらされ続けているとそうなってしまうというか(笑)

 

—入学した頃は全く考えていなくとも。

そうですね。

 

7.國領先生の昔

ー先生が私たちと同じ頃の話を聴きたいと思います。

僕は今では帰国子女と呼ばれるカテゴリに入っていて。中学生の時に丸ごと日本にいなかったんだよね。だから高校に入ってきた時は結構悲惨で。海外にいる意味が今と全然違うのよ。インターネットも何も無い時代で。つまり日本の状況なんて全く分からないまま、いきなり日本に戻ってきて、周りは受験だとか言っていて。無我夢中に勉強している間に3年間終わってしまった。


ーどちらの国に?
イギリスです。 

 

ー大学院は海外に進学されたとのことですが、文化も含めた生徒の考えや価値観の違いはありましたか。
そうね、アメリカに比べたらイギリスは遥かに日本に近いことはあって、先生の言うことはそのまま聴けということはあるんだけど、それにしても自分の考えを持つことを大事にしていた。
朝クロスカントリーで、ドロドロの雨の中森を3キロ走れとかさ。他にも授業の中に弁論術みたいなのがあったり。声が良く通るように呼吸法から覚えさせられるんだよ。

 

8.ものさし

ー最近は中高生でもいろいろと動いている人がいます。

そういう意味では、今の大学も全部とは言いきれないけど一つのものさしで序列を付けるバカバカしさが急速に変わりつつあります。同じ試験を何万人もが受けて上位何%をとるとか、それだけに頼ることの危険にはみんなが気が付き始めている。多面的なものさしで学生を見ないとだめだという機運が高まってきています。

その意味で自分の道において突出した才能を持っている人は、迷いなくやってもらえばいいと思います。やった上で、やった上で一年ぐらい浪人するのも構わないじゃん。大学に行くことが目標ならね。ある時期において自分の道を見つけて打ち込んで頑張った人は強いので。

 

—大器晩成ということですか。

大器晩成を狙うこともないと思うけどね。

 

ー夢とか目標を持ちなさいと言われてもまだ17年しか生きていないのでそんなに簡単には・・・

それが言いたいのよ。夢とか目標が見つからないで迷っているほうが普通の17歳だと思うよ。


ーでは、必ずしも持つ必要はない、と?
時々においてね。後に目標が変わったりするのもよくわかっているので。その時々の人生を一生懸命に生きている人がいいじゃない。

 

ー先ほどものさしとおっしゃいましたが、しかし何個もあったら切りがないじゃないですか。やはり取捨選択する必要もあるのではないでしょうか。
その意味では、このキャンパスで求めていることは結構少なくて、主体的にものを考えて解決策を見つける力ということかな。ただ実現する分野によって違ってくるからね。

 

ー國領先生が、尊敬している人物はいらっしゃいますか? 

大学の時のゼミの先生をとても尊敬していて、本当に人を育てることが上手い先生でした。
それぞれの学生が持っている思いを引っぱりだして、個性を尊重してくれました。こういうふうに人の力を引き出せるのはすごいと思って、今この職業についています。 

 

9.迷い
ーSFCというキャンパスでは、自分の思うように自由に授業がとれるのが特色だと思うのですが、自分って案外もろい存在じゃないかと感じていて、迷いがでて、しっかりと自分を持って判断できないときもあると思うんです。

実はそうなっちゃってもいいと思ってるの。 君たちにとっては22歳ってすごく年上のように感じるかもしれないけど、たかだかその年齢で勉強が終わるわけではないです。卒業するまでに勉強の仕方ってのがわかっていればいいわけで、願わくば基礎の基礎は大学時代に読んでいたりすると、また勉強しようとした時に手がかりになると思います。

 

10.インターネット(現在)
ー総合政策学部では、ツールとしてのインターネットをどのようにつかっていくべきだと思いますか。
僕らはこれは革命だと思っています。 コミュニケーションや情報がやりにくい時代は、偉い人の所へ行って情報を集めて判断してもらう構造になってた。僕が学生の頃も偉い大学の先生というのは海外へ行って最新の研究論文をもらって帰るとそれだけで権威だったのね。それを翻訳して読ませてあげるのが大学だったんだ。
 

 

ーインターネットも最初の当時は、論文がやりとりされていましたからね。itunesUを見るとインターネットで海外から教授が講演していたりもしましたが、こういう事例は結構あるのですか。 
そうだね。それに学生が一通メールをぼんと送ると直接教授のもとに届いたりするでしょ。あり得なかったの昔は。上下関係が横の関係に変わっていて、国と市町村の在り方も変えているし、様々なところで社会構造を変えていると思います。

 

11.終わりに

ー國領先生はSFCからこれからどういった生徒が育っていってほしいと思いますか。
日本国内においては活躍できている人を生み出せているように思います。一部それをグローバルにできている人もいます。もっとグローバルにできればいいと思います。